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「ちょっと……何してっ」  亮に抱き締められているという嘘みたいな現実に、焦った佑樹は体をよじるが離しては貰えない。 「佑樹が……俺から離れるなんて、そんなの嫌だ」  耳元で訴えてくる真剣な亮の言葉を聞いて、佑樹の胸は高鳴った。  あの日を境に亮に避けられる日々が続き、もう側にはいられないと思っていた。  きっと亮は心の中では気持ちが悪いと思っていると思っていた。 「変なこと、言わないで」  亮が告げてきた言葉が仮に本心だったら、どんなに嬉しいことだろう。  だけど、彼の願いが自分の望みとは異なっているという事が、佑樹には良く分かっている。  幼馴染みとして。  親友として。  情深い亮のことだ。長い間を一緒に過ごした佑樹を突き放すことに、罪悪感を抱いてしまっているのだろう。 「変なことじゃない。だって、俺は佑樹のこと……す、好きだから!!」 「っ!」  突然、キーンと耳鳴りがするくらいに大きな声で告げられて、あまりの事に佑樹の思考は一瞬だけ固まった。 「何、言ってんの? 冗談キツイよ」  ようやく発した乾いた声に亮の体がビクリと動く。 「冗談なんかじゃない!」 「馬鹿にしないで」  慌てたように反論してくる彼の胸板を強く押し、その腕から逃れた佑樹は俯いたままで口を開く。 「亮の好きと、俺の好きは全然意味が違う。分かってるよな?」  これ以上、惨めな想いはしたくなくて、佑樹は殊更冷静な声でそう告げた。 「同情とか、迷惑だから」  いくら鈍感な亮にだってこれだけ言えば伝わるだろう。

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