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 ***  目を覚ますとベットの上で、辺りはすっかり暗くなっていた。 「ん……何時?」  眠気まなこで時計を見ようと佑樹が体を動かした時、背中に何やら熱を感じて思わず小さく息を飲む。 「……っ!」 「どうした?」  ピクリと体が震えた刹那、声と共に抱きしめられて頭が一気に覚醒した。 「り……亮?」 「佑樹、起きたんだ……何か飲むか?」  戸惑っていると背後から聞かれ佑樹の顔が熱くなる。 「ど……して?」  キスの途中で意識が無くなり、気づいたらベットに二人で横になっているなんて、あまりに急な展開だから佑樹の頭は混乱した。 「ん? 佑樹がキスの途中で寝たから運んで、着替えは無理だから下だけ脱がした。それで起きるの待ってたんだけど、全然起きないから、泊まる事にして隣に寝た……それだけ、他には何にもしてない」 「あ……そうなんだ」  あまりに普通に話されたから返す言葉も見つからなくて、呆気にとられた状態ながらも返事をすると、亮がふぅっと息を吐く。 「ごめん、嘘。佑樹酸欠で意識無くして、テンパって歩樹さんに電話たらしこたま怒られた。そのうち起きるって言われたけど心配で、目が覚めるのずっと待ってた……で、抱き締めたくて布団に入った」 「……なんで、兄さんに電話?」  言われた言葉を反芻し、ようやく思考が戻った佑樹が振り返って亮を見ると、何ともバツの悪そうな顔をしている彼がそこにいた。 「だって焦って……医者の知り合い歩樹さんくらいしか……」 「何て言ったの?」 「キスしてたら意識無くしたって……だって嘘は言えないだろ?」 ――ああ、そうだった。  馬鹿正直にも程がある。  きっと、さっきも咄嗟の嘘を吐き通せなくなってしまったのだろう。 「ごめん」  頭を下げて謝る彼に、佑樹は小さく首を振る。  恥ずかしくて話題を変えてしまったけれど、目覚めた時に亮が側にいてくれて、本当は凄く嬉しかった。 「いいよ。心配かけてこっちこそごめん。もう大丈夫だから」  そう告げながら視線を逸らし、「だから、もう帰っていいよ」と言った途端、いきなり耳を摘まれた。 「痛っ……何!?」 「素直じゃない」  本当は帰らないで欲しいと思っている事なんて、お見通しだと言わんばかりに下から顔を覗かれて、佑樹の胸がドキドキと音をたてて脈打ち始める。 「そんなこと……」  無いと言いかけた佑樹だけれど、近距離で目が合った瞬間、その真剣な眼差しに……言葉を止めてコクリと唾を飲み込んだ。 「まだ信じてくれない? 俺が佑樹を好きだって」 「……夢じゃないかって、思ってる」  これが全部夢だったら? そう考えると怖くなって素直になんかなれなくて……。  ポツリポツリと気持ちを話せば、亮は優しく頷きながら、時折頬や額にそっと軽いキスを落としてきた。そうする内に佑樹は自分の心を囲っている壁が、少しずつ取り払われていくような……そんな感覚に囚われる。 「亮……好きだよ」  思い切って告げた言葉で夢から覚める事は無く、逆に強く抱きしめられて、心の中が満たされていくのを佑樹はじんわり感じていた。  これまで色々な事があって、この先もきっと問題は起こってしまうのだろうけど。 ――だけど今は、ただ幸せを感じていたい。  そう思った佑樹はゆっくり亮の方へと手を伸ばし、自分の気持ちを届けようと、顔を引き寄せその唇へとキスをした。  この先も、ずっと一緒に居られるよう……心を込めて。 END ありがとうございました。 次は日向たちのお話です。

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