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番外編4
【作品内容】
浩也×日向
甘い、初デート、なんとエロ無し。
いつもと違う雰囲気を楽しんで頂ければと思います。
***
「浩也くん」
「ん?」
「僕、見たい映画があって、だから、その……」
控えめに話しかけてきた彼が自分に何を言いたいのかを、本当は知っている。
だけど、困っている日向の姿をもう少しだけ見ていたくて、浩也は少し意地悪をして素っ気なく尋ね返した。
「どうした?」
「あの……えっと、浩也くんは……映画好き?」
眉尻を下げてこっちを見つめる日向の瞳は潤んでいて、小動物みたいな様子がなんともいえず可愛らしい。
「好きだよ。その映画、今度の日曜一緒に行こうか」
あまり虐めるのも可哀相だと思い直し、浩也のほうから誘ってみれば、まるで花が咲いたかのように日向の表情がパッと綺麗に綻んだ。
「本当!? 嬉しい、浩也くん……ありがとう」
「ああ、約束な」
言いながら、頭をクシャクシャッと撫でた浩也は日向の髪へとキスを落とした。
「あっ」
たったそれだけの触れあいなのに、耳まで真っ赤に染めた日向がビクリと体を震わせる。
大きな瞳を更に見開いて驚いたようにこちらを見るから、頬にもチュッとキスをしたら今度は体から力が抜けた。
「嫌だった?」
「ちが…違う、いきなりするから……僕、驚いてっ」
ブンブンと大きく首を横に振る日向の姿が可愛くて。
「嬉しい……ホント、凄い嬉しい」
懸命に気持ちを伝えようとするその小さな唇を、自分のそれで塞ぎたいと思ったけれど、浩也はグッとそれを堪えた。
キスだって、セックスだってもう何回もしてきたけれど、恋人同士という関係に日向はなかなか馴れないようだ。それについては折角想いが通じたのだから、少しずつ、日向のペースで進めていけばいいと思う。だけど。
――これはこれで可愛いけど、もう少し馴れてくれたら。
と、心の中で浩也はポツリと呟いた。
とはいえ、一緒に居ることが出来るだけで、今は幸せなのだけど。
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