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「寒っ」
季節は一月。吹く北風に体が震える。
マフラーに顎を埋めた日向は、手袋を忘れ冷えた指先を擦り合わせて玄関を見た。
携帯電話を忘れて来たから今の時間は分からないけれど、7時位に着いた筈だからそろそろ8時を回る頃だろう。
「……あ」
校舎の壁に掛かる時計が見えないか目を凝らした時、玄関の中に人影が見えて日向は小さく声を上げた。
――来た!
遠目な見てもすぐに分かる。
他の役員の姿は見えず少し不思議な気持ちになるが、そんな事もあるのだろうと思った日向は足早に歩く浩也の元へと駆け寄った。
「こ、浩也くんっ」
少し距離が開いていたから、校門を出た辺りでようやく追いつき声をかける。
「……ヒナ?」
浩也は酷く驚いたように脚を止めて振り返り、それからまるで気が抜けたようにホッとしたような顔をした。
「携帯……出ないから、どうしたのかと思った」
「ごめん。家に忘れちゃって」
「なんで来たんだ。家で待ってろって言ったろ?」
近づいて来た浩也が今度は怒ったように言ってくるから、日向は彼の顔を見上げて眉尻を下げ、小さく「ごめん」と謝罪をする。
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