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「何かあったんじゃないかって……心配しただろ」
「本当にごめん。僕、今日はどうしても、待ってられなくて」
怒られても仕方ないと思いながらも気持ちを告げると、街灯に映し出された顔が困ったような色を浮かべ、それから少し照れたように口元だけで微笑んだ。
「しょうがないな」
髪をクシャリと撫でられる。
「帰るぞ」
自然な形で伸ばされた手に掌をギュッと握られた。
明るい時間に出歩く時は手なんてとても繋げないから、たったそれだけで日向の胸がドクリと大きく音を立てる。
「うん」
暖かい大きな手を握り返して日向が言うと、
「手、冷たいな」と返した浩也が指先までを包み込んだ。
「あのさ、浩也くん。朝も言ったけど……誕生日、おめでとう」
一年に一日しか無い大切な人の生まれた日。
記念日になんて拘らないと常々浩也は言っているが、日向の誕生日にはマフラーをプレゼントして祝ってくれた。
「ありがとう」
横から聞こえる低音が、優しくて耳に心地良い。
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