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 一旦家へと帰った時、豪華とまでは言えないけれど、浩也と二人で祝う為に時間をかけて料理を作った。 ――喜んでくれるといいな。 「生徒会の仕事、終わったの?」  早く会いたくて来てしまったが、迷惑だったかもしれないと思い至って日向は尋ねる。 「大体はな。ヒナが電話に出ないから、後は任せて帰ってきた」 「あ……ごめんっ」 「いいよ。俺も早く帰りたかったし。でも、これからは、心配だから携帯くらい持って出ろ。心臓に悪い」 「うん。気をつける」  男だから平気だなんて言えないから日向は頷く。気持ちの上ではそう思っているけれど、これまで起こった様々な事で自分は非力な人間だと……悔しいけれど分かっていた。 「僕も強くなりたいな。柔道とか、合気道とか。そうすれば少しは強くなれるかな」 「怪我するから止しとけ。それに、ヒナは強いよ」  細い路地へと曲がった所で立ち止まった浩也がフワリと頬へキスを落としてきた。 「なっ」 「大丈夫。誰も見てない」  頬を真っ赤に染めた日向の額にも軽く口づけてから、何事も無かったようにまた浩也は歩きだす。

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