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時間の無駄①
「はい。これ3番ね。」
ナポリタンと野菜サラダが大盛りで乗っかった
プレートとカップに入ったコンソメスープを
カウンターに置くと バイトのタケルは
「はーい。」と素早くそれらをお盆に乗せ
テーブルに向かった。
柚はザッと店内を見渡すと 大丈夫かな。と
ホッと息を吐き出す。
ピークは過ぎたな。
ちらっと壁にかかった鳩時計へと目をやると
もうすぐ昼の1時。
リーマンさん達の昼休みは もう終わるしね。
その証拠に皆さん 我先にと伝票を持ち
レジ前に並び始めた。
極力お釣りが出ずに 会計が済ませる様に
ランチは消費税込みのジャスト千円。
ワンプレートにメインと野菜サラダ。
スープとコーヒーか紅茶が付いている。
お金を払い バタバタと急いで会社に戻っていく
様子に もう少し早めに出ればいいのにと
毎回思うんだけど。
週5でランチを食べに来る嶋田さんが
「ホントここで飯食ってコーヒー飲むと
会社戻りたくなくなるんだよなぁ。」と
言ってくれていたから 皆さんに居心地が良いと
思って貰えているのかもしれない。
じいちゃんがずっとやっていたこの店。
親父は継がなかったから 勝手に俺が継ぐって
ガキの頃から心に決め 調理師免許を取って。
しばらく洋食屋 クマザワに修行に入った。
じいちゃんの友達 熊澤さんがやっている店で
腕は一流 値段は庶民的で大人気の有名店。
めちゃくちゃ厳しかったけど。
怖くて でも凄く優しい俺の師匠。
じいちゃんが病気になり 継ぐ準備で
店を辞める事になり
「仕方ねえけど 柚にはずっとうちに居て
貰いたかったなぁ。。」
寂しそうにそう言われた時は嬉しい反面
申し訳なかった。
今でも 休みには飯を食いに行き
結局中に入って仕事を手伝ったりしている。
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