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時間の無駄②
じいちゃんが三年前に亡くなり独り立ちして
最初は失敗ばかりだったけど
温かい常連さん達にもよくして貰い
今は 何とか経営も成り立っていた。
コーヒーは自家焙煎。
ブレンドは天候を考え毎日配合を変える。
これがこの店の決まり。
調理は修行したから問題無いにしろ
一番苦労したのがこれだった。
言われた通りやれば出来る訳じゃない。
経験が必要で 最近なんとか形になってきた。
ランチタイムが終わり 片付けをしていると
タケルがニヤニヤ笑いながら近づいてきて
「で。どーするんですか?」と聞いてくる。
なんの事かわかっていながら
「何が。」としらばっくれた。
「わかってるクセに。あのイケメンですよ。
金払って恋人になってくれ。なんて
斬新なナンパだよなぁ。まあ 確かに 伊織さん
エリートっぽいから金持ってんだろーけど。」
ケラケラ笑いながら タケルはそう言った。
もう。。人ごとだと思って面白がって。。
伊織爆弾が投下された時 お客さんは居なかったけど
バイトで入っていたタケルは その一部始終を
カウンターから眺めていて
ポカンと口を開けていた。
「でもなぁ。なんで柚さんなんだろ。
確かに男の中では可愛いし スタイルもいいけど
あの人なら金なんか払わなくても
女がほっとかないんじゃないかなぁ。
超イケメン。着てるスーツは全部高級ブランド。
時計も靴もそうだし 金持ちのイケメンが
喫茶店のマスター ナンパする必要なんて。
ねえ。そー思いません?」
こっちが聞きたい。
可愛い云々も気に入らないけど まず俺は
正真正銘 男だし ソッチの趣味も無い。
っていうか 伊織さんだって違うよね。
そんな風には見えないし。
じゃあなんで。
そう。 なんで?? なのだ。
だけど あの人。その時。。。
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