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時間の無駄④
「はい。鳩時計です。」
しばらく何かを聞きながらにやにやと笑みを浮かべ
こちらへちらっと視線を送る。
「はーい。ちょっとお待ちください。
柚さん。沢木さん。」
そう言って 受話器をはい。と俺に向かって
差し出した。
ひったくる様に受話器を取る。
「沢木さんっ!」
「柚くん。ごめんね~。伊織がなんか
やらかしたんだって?」
すまなそうにそう言う後ろから
やらかしてはいない。と呟く低い声が聞こえてくる。
やらかしただろっ!と怒鳴りたいのを抑え
「困ります。お金。置いて行かれてしまって。。
あの。早く取りに来て頂けないでしょうか。
何度か会社にもお電話したんですけど。」
「ああ。うん。聞いてるよ。本当にごめんね。
それでさ。俺も同席するので一回話いいかな。
閉店後で良ければ店に伊織連れて行くけど。」
俺の抗議を受けながら沢木さんはそう言った。
こっちには話なんて無い。
ただお金を返せればそれだけでいい。
そうも言いたかったけど 一応お客さんだし
何か事情がある口ぶりに無下に断る訳にも
いかないよな。。
明日は定休日。
どちらにしろ片付けや掃除で遅くまで残っているし
まあ。いいか。。
「・・・わかりました。じゃあお待ちしてます。」
「ありがとう。」
ホッとしたように沢木さんは礼を言い
何時頃がいいかのやり取りをして
「じゃあ後で。本当にごめんね。」
ぷつっと電話が切れた。
忙しそうだな。
聞こえてくる雰囲気が車の中からだった気がする。
目の前から消え去った高級セダンが脳裏に浮かんだ。
あんなのに乗っている人が 一体何の冗談だろ。
冗談なんて全然言わなそうに見える人なのに。
まあ とにかく何はともあれお金を返して
言い訳をしたいのかもしれないから
我慢して それを聞いて。
全部早く忘れたい。
柚は受話器を電話に戻し ドアから入ってきた客に
向かって笑みを浮かべた。
「いらっしゃいませ。」
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