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時間の無駄⑤

沢木は電話を切るとソッポを向き 車窓へ目をやる 伊織に向かって おい。と声をかけた。 「柚くん。時間作ってくれるってさ。 なんでまた一人でそんな事したんだよ。 やるならやるで 俺が戻ってからでも 間に合っただろう。」 伊織は ふん。と鼻を鳴らし それでも何も言わない。 まあな。 かなり頭にきたんだろうが。 だからって何故そこだったのか いくら付き合いが長いからとはいえわからない。 「まあ。柚くん。可愛いけどね。 だからって何も説明せずになぁ。。」 「時間がなかった。金を受け取り 了承すれば すぐに済んだ話だが。」 やっと口を開いたと思えば そんな言い訳。 「まさか そのまま言ってないよな。」 む。と口籠もり 暫く車の天井を見上げながら ああ。と頷いた。 「時間の無駄だとは言った。」 はぁ? 「何だって?」 だから。と伊織は眉間にシワを寄せ 「何を言っているかわからないと言われた。 それを説明する時間が無駄だと言っただけだ。 会合の時間が迫っていたし あそこで時間をかければ そっちの時間までずらさなければならない。 そんな事をするのは無駄だという意味だ。 また来るとちゃんと伝えたし そうだろう。何も間違った事は言っていない。」 腕を組み そう吐き捨てる。 コイツは本当にもう。。 「コーヒーぶっかけられなくて良かったな。」 沢木は諦め ただそう返して 分刻みの予定が 書かれているスケジュール帳のページをめくった。

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