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時間の無駄⑧
冗談じゃない。
そんなウソに付き合わなきゃならない
理由なんてこっちには何処にも無い。
100万が入った封筒をテーブルに置き
伊織さんの前へとずらした。
「お返しします。俺。そんなに暇じゃないんで。」
それでも 封筒は受け取らず 黙ってコーヒーを
飲んでいる。
沢木さんはため息をつき 伊織さんを窘めた。
「ほら。こう言ってるんだし。伊織。。」
「何が気に入らない。金額か。」
遮るように 伊織さんは腕を組み そう聞いてくる。
この人。
正気なのかな。
「金額な訳ないでしょ。なんで俺がそんな事に
付き合わなきゃならないんですか。
いい加減にして下さい。」
流石にムッとして そう返すと
伊織さんは 暫く黙って考え込み
すっと視線を店内へと移した。
壁にかかった鳩時計を指差す。
「あの時計。動かないらしいな。」
ああ。
「そうですけど。。」
前にお客さんと話していた事があるから
それを聞いたのかもしれない。
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