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時間の無駄⑩

「・・・で。引き受けちゃったんですか。」 タケルは皿を洗いながら目を丸くして 驚きの声を上げた。 だって・・・。 「・・金貰うよりいいだろ。 なんか良くわかんないけど とりあえず親戚の 集まりとかで恋人だって紹介されるのを我慢して じっとしとけばいいみたいな話だったし。。」 ホントはそれだけじゃなかったけど。 詳しくは話したくなくてそう誤魔化す。 じいちゃんにガンが見つかって。 年も年だから進行は遅く 今すぐどうこうって 事ではないみたいだけど 生きているうちに鳩時計が動く所を 見せてやりたいとずっと思ってたし。 痛い所突かれたよな・・。 明らかに心が動いたのを悟られたのか 畳みかけるように言われて。 「後悔などするものじゃない。時間の無駄だ。 あの時こうしておけばよかった そうしておけばよかったと後悔しても 時間は絶対に遡らないし  出来る事をやらない人間の自己満足でしかない。 あの時計を直したいと思っていたんじゃないのか。」 そうだけど。 なんでそんな事。 そこまで話しているのを聞かれた覚えは無い。 まあ。多分金で動かないと見て 苦し紛れに当てずっぽうで口にして それがたまたまヒットしたから 言いくるめようとしてるんだな。 っていうか。 「他にいないんですか。別に俺じゃなくても 伊織さんなら選り取り見取りでしょう。」 嫌味マックスでそう返すと ふん。と別にそう言われる事を不思議とも 思わないとでも言いたげに否定もしない。 それでいて説明しようともしない伊織さんの代わりに 沢木さんは苦笑いを浮かべながら口を挟んだ。

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