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時間の無駄⑫
「顔は好みだ。恋人として行動を共にするのに
最低限不愉快に感じない程度の外見は求めたい。
ただ。それだけだ。他に何がある。」
スパンとそう言い切った。
うわ。ムカつく。
褒めたつもりもないんだろうけど
こんだけ悪口に聞こえる事も他にない。
ここまでくると怒りを通り越して
逆に笑えてくるぐらい。
まあ 一番わかりやすい理由だし。
妙に納得してしまった。
「どうする。これは君と俺とのビジネスの話だ。
やるのかやらないのか。」
伊織さんは腕を組みじろっと俺を睨みつけながら
そう決断を促してくる。
ぐだぐだ悩んだり先延ばしにされる方が
時間の無駄だとでも思ってるんだろうな。
あの時見たじいちゃんの丸まった背中が
小刻みに震える姿が脳裏に浮かぶ。
あれが自分になる可能性。。。。
はあ。と息を吐き出した。
「具体的に何をすればいいんですか。」
この俺の質問が参加表明と受け取られたらしく
伊織さんは満足げに笑みを浮かべた。
で。
その親戚の集まりにただ行けばいいのかと思ったら
疑われないようにしなきゃいけないらしく。
「まずはその恰好からだな。
スーツは持っているのか。」
「スーツ・・・。相当昔に買ったヤツなら。。」
それこそ成人式の時に買ったヤツとかしか
持ってない。
伊織さんは呆れたように顔をしかめ
沢木さんはくすっと笑う。
「まあ。そうだよね。会社勤めじゃなければ
スーツ着る機会もなかなかないだろうし。」
沢木さんのフォローも聞き流し
伊織さんは深いため息を吐いた。
「あの連中は疑い深い。スーツも着ないような
奴を相手と見なす訳が無い。」
そう言って立ち上がる。
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