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対等①

うわぁ。。。 柚はぽかんと口を開けたまま煌びやかな高層ビルを 見上げていた。 沢木さんから連絡があって 仕事終わりで構わないからって このビル前に来るように言われたんだけど。 「迎えに行ってあげたいんだけど出先でね。 時間に間に合わなくなっちゃうから。ごめんね。」 って沢木さんがすまなそうにそう言ってて。 全く馴染みのない高級ブランドを扱う店が ずらっと並ぶ街。最寄駅さえ降りた事が無い。 見るからに高級車ばかりがバンバン走っていて 道行く人もどこかセレブ感満載。 完全アウェイでもうすでに帰りたくなってる。 っていうか。 合ってんのかな。。 スマホの地図アプリの通りとりあえず 歩いてきてはみたものの・・。 目の前一面ガラス張り。 高級ブティックとかってヤツなんだろう。 でも中は明かりがほとんど消えている。 そりゃそうだ。もう結構いい時間。 やってるのは飲食店ぐらいのもので それもこの辺りはぽつぽつとしか見かけない。 綺麗なイルミネーションで彩られた並木道に 目を向けていると 黒い高級セダンがすっと止まり ドアが開いて伊織さんと沢木さんが降りてきた。 「柚くん。ごめんね。お待たせしちゃって。」 沢木さんはそう言ってくれるけど 伊織さんは目を合わせようともしない。 爆弾投下から一度も店には来ていないから あれ以来のご対面。 その割にはずいぶんな態度ですこと。 さすがにムッとすると沢木さんがドンッと 伊織さんの胴を肘でつく。 「ごめんね。ちょっと会議でトラブルがあってさ。 機嫌があんまり良くなくて。」 「余計な事を言うな。コイツには関係が無い。」 不機嫌丸出しでそう返す。 そりゃそうだ。 でもわざわざ呼び出しておいて その態度は人としてどうなの?とか 言いたくなるけど グッと我慢した。 きっと言ってもしょうがない。 とにかく早くこの時間が終わればいい。 さっさと切り上げて地元に帰ろう。

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