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対等⑤

謝るとは思わなかったから吃驚して固まる。 沢木さんが苦笑してぽんと俺の肩を叩いた。 「ごめんね。柚くん。俺からも謝るよ。 事前説明は俺の仕事だった筈だから。 とはいえ伊織の態度が一番問題あるからね。 伊織。車は回しておくから今日のお詫びに 柚くん。ご飯でも連れて行ってあげて。 後はやっておくから。ね。」 そう言って伊織さんと俺の背中を押して エレベーターの中に押し込む。 ひらひらと沢木さんは手を振りドアが閉まった。 気まずい雰囲気の中エレベーターが1階に到着する。 ドアが開き外に出るとぺこりと頭を下げた。 「すいません。ついカッとなっちゃって。 お詫びとかいいので帰ります。」 もう一度頭を下げて歩き出すと足音が近づき またグイッと腕を引かれる。 伊織さんは顔をしかめたまま 何か言いたそうに口をパクパクさせると 諦めたのかため息をつき そのまま俺の腕を引いた。 無理やり押し込むように車の後部座席に乗せられる。 「シティ。」 後から乗り込んできた伊織さんがそう言うと 運転手さんが頭を下げ 滑らかに車が走り出した。 ふかふかのシート。 この人たちの周りって何でも ふかふかしてんだな・・。 それでもやっぱり空気が重くて居心地が悪い。 身を縮めていると 伊織さんは煙草に火をつけ 窓を少し開けた。 「あ・・あの。俺ホントに・・・。」 「・・普段のやり口かと聞かれれば そうかもしれない。」 伊織さんは俺の言葉を遮って さっきの話を蒸し返した。 「ビジネスにおいて対等と呼べる関係性を持つ 人間はあまり居ないからな。 基本的に全てが下で 口調もついそうなって いるのかもしれない。気分を害したのなら・・・ すまなかった・・。」 最後の方がまたちっさい。 それこそ謝ったりもしないんだろうな。 悪気が無いってのも凄いけど それくらい地位が高い人でもあるって事。 まあ。さっきは見下される覚えはないって思ったけど それなら見下すのも無理はないのかもしれない。

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