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対等⑦

っていうか。 「恋人の定義とか言われてもちょっとわかんない ですけど。。普通命令口調とか絶対無いですよ。 それこそ恋人とは対等なんだから。 どっちが上とかも無いし。」 「金を全てコッチが払っているにも関わらずか。」 その声音がホントに驚いているように聞こえ 本気で言っているのが分かる。 とはいえ マジですか。。 「金は関係ないじゃないですか。 払いたくないなら割り勘にすれば良いんだし。。」 「割り勘・・。」 え。 これもわかんないのかな。 ちらっとバックミラーに目をやると 運転手さんは眉を下げ 小さく首を振った。 あー。そうですか。。 伊織さんはまるで難題にぶつかったかの様に 首を傾げている。 この人。ホントにこうなんだな。 多分自分の世界以外は何も知らない。 ちょっと悪戯心が込み上がった。 「伊織さん。今日のお詫び。俺の行きたい所に 行ってもいいですか?」 「・・ああ。構わないが・・。」 不安げに視線を寄越すのを無視して身を乗り出し 運転手さんに行き先を告げる。 「わかりました。」 そう言って運転手さんは少しだけ口元を緩めた。

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