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対等⑧

「勝さん。こんばんは。」 声をかけながらビニールのカバーを巡り中に入る。 「おう!柚ちゃん。今日は遅いな。」 大将の勝さんはニコッと笑みを浮かべると 呆然と立ち尽くす伊織さんを不審げに眺めた。 川沿いにあるおでんの屋台。 仕事が終わった後に寄る事が多い。 屋台とはいえ 味は抜群。 いつも混んでるけど 時間が遅いからか お客さんは居なかった。 「伊織さん。」 袖を引くと 伊織さんは ああ。と大人しく座った。 ヒャクパーこういう店には来た事が無いだろう。 でも俺は高い店なんかよりよっぽど旨いと思ってる。 「俺。一応料理人なんで 多分伊織さんが 普段行くレストランとかも勉強で食いに行った事は あります。それでもここ。旨いんですよ。 勝さん。いつものとビール下さい。コップ二つ。 ああ。あと別におでん見繕って貰っていいですか。 大盛りでお願いします。」 あいよ。とお通しのポテサラと瓶ビールが出て コップに注いで伊織さんに無理矢理渡し コンと合わせて グイッと一気に飲み干した。 「あー!旨い。」 すぐにすじぽんが出てくる。それも丼。 はい。とビールに口をつけた伊織さんの 目の前に置くと キョトンとそれを凝視した。 「牛すじポン酢です。下処理完璧だから マジで旨いですよ。」 箸を渡すと 伊織さんは眉間に皺を寄せ しばらくじっと動かない。 ちらっと俺に目を向けて 意を決した様に 口に運ぶと 驚いたように目を見開いた。 「・・旨い。」 勝さんと顔を見合わせ くすっと笑った。 このすじぽんを不味いって言う人には 未だかつて出会った事が無い。

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