27 / 121

対等⑨

夢中になって食べている伊織さんをそのままに 勝さんが見繕ってくれたおでんの皿に 辛子を乗せて箸を持ち 立ち上がる。 待っていてくれている運転手さんに渡して戻ると 伊織さんは既に全部完食し 不思議そうに俺を見た。 「何故そんな事を。」 何故。 「こっちで一緒にって言ったら無理だって言うから じゃあ車の中ならいいだろうと思って。 こんな旨いおでん目の前にしてお預けなんて 可哀想でしょ。重労働だからお腹空いてるだろうし。 お酒飲めないのが申し訳ないなぁ。」 店にもタクシーの運ちゃんやトラックドライバーが 来てくれるけど みんなよく食べる。 そう言うと またよくわからないのか 伊織さんは首を捻った。 確かに従業員としか思ってなければ そういう気遣いはしないかもね。 すごく恐縮されたし。。 でも俺はリーマンじゃない。 「まあ。いいや。伊織さん。おでん何食べます?」 問いかけると 伊織さんは並ぶおでん種に目をやり また首を傾げる。 あれ。。 「おでん。食べた事無いですか?」 ふるふると首を振られた。 そっかぁ。。コンビニも行かない系。 「じゃあ勝さん。」 「あいよ。本日のベスト5な。」 そう言ってお皿におでんを入れてくれる。 「大根、イワシのつみれ。イイダコに卵。 それと柚ちゃんの大好きなロールキャベツな。」 はいよ。と俺たちの前に置いてくれた。 「アレもいくかい?」 「はい!お願いします。」 コップに焼酎を入れておでん出汁で割ると はい。と渡してくれる。 唖然と伊織さんはまた口を開けた。

ともだちにシェアしよう!