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対等⑬
「いえ。大丈夫です。逆になんかすいませんでした。
ちょっとあの人が行った事ないんじゃないかって
所に連れて行きたくなっちゃって。。」
「なかなかカルチャーショックだったみたいだよ。
この間 たまたま夜の会合が無くなったら
おでんが食いたいって言いだしてね。」
沢木さんは思い出し笑いをしながら話を続ける。
「おでんなんか食べた事無いだろうと
思ったんだけどさ。有名店を探して
連れて行ったら 一口食べただけて
【違う。】って言って店を出ちゃって。
よくよく聞いたら あの日柚くんに連れて行って
貰ったのが おでんの屋台だったんだって?」
「そうです。。」
やっぱり屋台なんか連れて行くような人じゃ
無かったんだな。
悪ノリが過ぎたのかも。。
「すいませんでした。」
謝ると沢木さんは手を振って
「いやいや。そこのおでんみたいなのが食いたかった
らしいんだよ。元々あまり食に興味が無い奴だから
よっぽど美味かったんだろうな。
なんだっけ・・すじぽんに焼酎の出汁割?
話聞いてるだけで旨そうでさ。
今度 俺も連れて行ってよ。ね。」
ニコッと笑みを浮かべた。
そっか。
喜んでくれたんだな。。
ちょっとホッとする。
今日は別行動なのか沢木さんは一人で来て
珍しくオムライスを注文し 旨いねって言いながら
食べてくれた。
タケルはテスト期間中で今週は居ない。
「伊織さんは今日どうしたんですか?」
ああ。と沢木さんはナプキンで口を拭く。
「本家からの呼び出しでね。
定期的にあるんだよ。流石にそれには
付いていけないからね。」
そうなんだ。
本家って言い方が馴染みが無くて
よくわかんないけど。
沢木さんはコーヒーを飲み干し
お代わりを要求すると お腹をさすった。
「前に食べている人を見て旨そうだなって
思ってたんだけどやっぱり美味しかった。
御馳走様。コーヒーも旨いけど
柚くん。本職はこっちなんだね。」
「ああ。そうですね。洋食屋で修行してるんで。
コーヒーはじいちゃんが病気になって
跡を継いでから勉強したんです。」
ああ。そうか。と沢木さんは言ってから
暫く何かを考えて 一人で頷くと口を開く。
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