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ビジネス③
とはいっても。
コーヒーじゃないよな。
最近はブレンドを飲んでくれるようになった。
結構ダメ出しも食らって。
でもここの所は何も言わなくなってる。
嬉しかったなぁ・・・。
でも。仕事終わりで飯食うのに
コーヒーってのもね。
夜ご飯を食べにくるお客さんは 酒を飲む人が多い。
とはいえ生ビールとハイボール、
ワインくらいしか出せないけど。
冷えたグラスを出して生ビールを注ぐ。
カウンターに出すと 伊織さんはカウンターの椅子を
引いて座り 一気にぐびぐびと飲み干した。
あーあ。
「喉乾いてたんですね。もう一杯飲みます?」
ああ。と頷くのを確認し グラスを下げ
新しいグラスを出して生ビールを注ぐ。
「君は飲まないのか。」
煙草に火をつけながらそう聞いてきた。
ああ。そっか。
でも・・。
「オムライス作ってからにします。」
調理中に味がわからなくなるのだけは嫌で
仕事中もプライベートも料理を作る時は
よっぽどじゃないと酒は飲まない。
「そうか。ならば残業代も払おう。」
伊織さんは真面目な顔でそう言って
煙をふわわと吐き出した。
残業代。。
思わず吹き出すと眉間にしわを寄せられる。
「・・・なんだ。」
「えー。だって。残業代なんて無いですよ。
どういう査定でいくらにします?」
ちょっと面白がってそう言うと
伊織さんは真剣に考え始めた。
「君の一カ月の取り分はいくらだ。
それから時給を出して 深夜割増を・・・。」
いやいやいやいや。
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