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ビジネス⑩
「沢木室長。お願いします。」
沢木は資料を読んでいた顔を上げ デスク前に立つ
部下へと視線を向けた。
「ああ。ありがとう。早かったね。」
いえ。と碓氷は頭を下げる。
元々営業だったが 何故か入社時から
ここを希望していて 一人大阪支店へ異動した空きの
穴埋めに調整してうちに配属させた。
営業でも成績は抜群。
事務処理も早く 出すのを相当渋られたくらい。
なのに 何故うちなのか。そこに興味もあったけど
今の所 その理由は思い当たらない。
伊織には 「あれはお前の信者だろう。」と
興味なさそうにそう言われたが。
信者ねぇ。
取り立てて愛想がいい方でも無ければ
取り入ろうとする感じもないんだけどね。
とはいえ うちでも仕事は完璧にこなす。
秘書室は数名のスタッフで無限にある仕事を
完璧にこなしていかないと日々成り立たない。
なんせ社長が横暴なんでねぇ。。
昨日もクライアントとの打ち合わせで
無理難題を突きつけられ 完全に機嫌を損ね
「鳩時計に行く。」と次の予定をキャンセル。
まあ。それ程重要な会食では無く 俺が行けば
充分で それを伊織もわかっていての確信犯。
とはいえ 急なスケジュール変更は
調整が大変なんだよ。と少しはわかって欲しい。
なんて。
実は内心ちょっと喜んでもいるけど。
今までは ストレスの行き先が無く
去年は過労で一度入院。
ワガママだけどストイックだからすぐに無理をする。
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