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ビジネス㉜
一生・・・。
伊織さんは驚いたように目を見開き
小鉢と俺の顔を行ったり来たり。
それでもなかなかやっぱり勇気が出ないのか
箸は伸びてこない。
まあ。いいや。
「じゃあ。いただきまーす。」
じゃがいもに満遍なく塩辛を乗せて
口に入れると 絶妙な塩味にねっとりとした食感。
ほろほろと崩れるように柔らかい
じゃがいもにバターが混ざり合って・・・
「旨い!やっぱり勝さんの塩辛最高!
それにこのじゃがいもも旨いんだよな~。
ああ。もうダメだ。俺。ポン酒貰います。」
あいよ。と勝さんは言い 俺の目の前に
コップを置くとトプトプと一升瓶から
日本酒を注いでくれた。
もう。塩辛には絶対ポン酒でしょ。
ぐびぐびと冷酒を飲み また塩辛を口に入れる。
あーーーー。
「幸せだぁ・・・・。」
ぐずぐずと湿った気持ちが一気に解け
すっと心が軽くなる。
ほう。と息を吐きながらそう言うと
伊織さんは難しい顔をして 塩辛を
じっと睨みつけていた。
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