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ビジネス㉝

「俺。思うんですけど。」 コップ酒を飲みながら口を開く。 「この世の中には知らない事沢山あって。 俺は伊織さんの世界。全然知らないし 伊織さんの事も正直理解出来ない事多くて 混乱します。でもだからって知らなくていいとは 思わないし 別に後悔とかしてません。 最初はホント何なんだって思ったけど。」 そう。 嫌で嫌でしょうがなかったけど でも今はそうは思わない。 自分が見て感じた事は例えそれがビジネス上の話でも 俺にとっては それだけじゃなくて。 全く理解出来ないと思っていた人を 理解し始めていて。 それが嬉しかった。 単純に。 それが嬉しかったんだ。 うん。 もうそれでいいんじゃないかな。 考えたって 多分わからない。 なんか。 もういいや・・。 「だから。伊織さんも知るべきだと思います。 この塩辛食べなかったら一生後悔するし 食べて自分に合わなかったらそれはそれ。 俺はそう思うんですけど。伊織さんはどうですか。」 伊織さんはじっと俺を見つめ はあ。とため息をつく。 「たかだが食い物の事で それだけ 哲学を語れるとは本当に君は面白い。」 そう言って恐る恐る箸を伸ばす。 何度も躊躇いながらそれでも塩辛を口に入れた。

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