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ビジネス㉟

コの字カウンターの反対側で勝さんは 常連さん達と競馬話で盛り上がっていて 俺と伊織さんは塩辛と牛すじの煮込みを摘みながら 冷酒を飲んでいた。 勝さんの店はかなり自由度が高く 一升瓶を置いてくれていて 勝手に注ぎ足し その減り具合で勘定してくれるからいい。 それがまあ。良心的なのなんのって。。 あー。だいぶ酔っ払ってきたなぁ。 あんまり眠れてなかったし ふわふわする。 伊織さんは全然変わらないペースで飲み続け ふと口を開いた。 「君はあの時 怒っていただろう。 俺なりに色々考えてみたんだが・・。」 伊織さんは 言われた通り塩辛を摘み 口に入れて コップ酒を飲む。 へえ。。ちょっと意外。 てっきり逆にビジネスなのにって キレてると思ってて。 もういいって言われるのかともちょっと思ってた。 「どう考えてもわからなかった。 だが 沢木に君は好意でやってくれたのに 俺がビジネスだとばかり強調したから 怒ったんじゃないかと言われたんだがそうなのか。」 そうなのかって。。 そっか。 そこからわかんないんだ。 俺の気持ちがわからない以前に その状況 何一つ全部わかんなかったって事? あー。 それならそっか・・。 この人 仕事以外 知らないのか・・。

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