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ビジネス㊱

「まず好意というものがわからない。 何かをすれば見返りを求めるのが普通だ。 ましてや 君はあの時仕事を終え 残業を強いられた。だが残業代など無いと言う。 ならばせめて代金は取るべきだと思ったし 店の品物全て 店のコストと考えるべきで・・。」 冷静に聞けば この人の言う事は理解出来る。 あの時は冷静じゃなかった。 キスされて 自分の動揺と気持ちに戸惑い その上 ビジネスと言われて何故かショックで。 だから また金の話をされて異常に拒絶反応を 起こして・・。 「うん。伊織さんならそうですよね。 経営者の観点ならそれで正解です。」 イジけてる訳じゃない。 その通りだし。 ちびっとポン酒に口をつける。 すると 伊織さんは うーん。と 何故か唸り声を上げた。 「・・どうしました?」 「いや。君がそう認めても 何故か一切 スッキリしない。沢木に損得なしに 付き合う人もいる。俺も結構そうだと言われ まあ。確かにアイツの業務量が給料と 見合っているかと考えると 普段 俺との会話に 付き合う時間も含め 相当では無いと感じた。 ならば それでもアイツが俺と一緒にいる事が 好意というものなのか?」 まあ。 俺がああなったのはそれだけじゃないけど。 「そうですかね。沢木さんは伊織さんの事 上司とかビジネスパートナーってのより 友達って思ってるのもあるんじゃないのかなあ。 前に学生の頃の話 聞かせて貰ったんですけど 楽しそうに話してたし・・。」 この人と長い間苦楽を共に出来るのって 金だけじゃ無理だよね・・って思う。 それにそういう魅力って 伊織さんにはあると思うし。

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