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鳩時計⑦

「沢木。頼みがある。」 伊織は社長室の椅子に座り ギロっと俺へ視線を向けると 厳しい表情を崩しもせずに そう言った。 へえ。 いつもならそんな事言わずに あれやれこれやれって言うのに。 「なんだ。どうした。」 伊織は腕を組み じろっと俺を睨みつけた。 「鳩時計周辺で何か不穏な動きは無いか 調べられるか。多分そんなに簡単にバレるような 手筈にはなっていない。」 伊織は煙草に火をつけると 苛々と 指を動かし 煙を吐き出した。 鳩時計周辺・・? 「え。柚くんに何かあったのか?」 相変わらず仲良く飯を食ったり 酒を飲んだりしているのは知っている。 この間やっと件のおでん屋に一緒に行かせて貰い すじぽんに塩辛。おでんと出汁酒も 飲ませて貰ったけど。 あの時も二人でいちゃいちゃしていて 見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいだった。 柚くんが楽しそうに笑い 伊織が口元を緩める。 一つのお題にああでもないこうでもないと 会話のキャッチボールが延々と続く。 あの寡黙で無駄口一切叩かない伊織がねえ。。 そんな様子に これはもうビジネスじゃ ないんじゃないのかって疑うぐらいだったのに。 伊織が誰かと一緒に居て あんなに楽しそうとか。 今まで一度も見た事がなかったなぁ。 そういう意味でも 本当によかったと 思っていたんだけど。

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