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鳩時計⑧
「昨日。いつものように鳩時計で
コーヒーを飲んだ。」
ああ。それは知ってる。
俺は別の会議に出る必要があり
伊織だけ会食へ向かい その帰りに
柚くんに会いに行った筈で。
「うん。それで?」
促すと 伊織は苛々と煙草を灰皿に押しつけた。
「ブレンドの味が明らかに違った。」
え。
「それだけ?」
そりゃ。そういう事だってあるんだろう。
ある程度のレベルを保っているのは
必須としても 毎日同じ味なんて・・・。
伊織はふるふると首を振る。
「柚は俺に言われてからそれこそ一生懸命努力して
俺が納得する味のブレンドを出すようになっている。
違う配合を試した時は必ずそう言い
感想を求められるし 厳しい意見もちゃんと
受け止めて また挑戦する。
だが昨日は全くそういう事も無く
だからといって不味いわけでもない。
きっと 何か心配事があり だが仕事に手は抜かないと
必要以上に気を遣ったんだろう。
それが逆に置きに行った味となっていた。」
不満げにそう言い 椅子の背もたれに寄り掛かった。
へえ。
それでそんな事がわかるのか。
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