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鳩時計⑩

拓真が店に入ってきた。 クローズの看板を出し表の電気を消して 店の片づけをしているとドアが開き その場に立ち尽くしている。 「拓真。」 声をかけると バツが悪そうに そろそろと顔を上げた。 「ビールでいいか?」 そう聞くとコクンと頷き おずおずと近づいて いつものカウンターの席に座る。 あれから一度も会っても無ければ LINEでも連絡を取っていなかった。 でも。こうやって来てくれたのは ちゃんと話そうとしてくれてるから。 だよね。 俺もちゃんと話さないと。 うん。 冷えたグラスにビールを注ぎ 自分の分も同様に注ぐ。 はい。とグラスを差し出すと 拓真はグラスを持ち コツンと合わせた。 グビッと一気にグラスを空ける。 「・・この間は悪かった。」 ぺこりと頭を下げてくれた。 そんな事ないって言いそうになったけど。 違うな。 今はそれじゃない。 「ホントだよ。おかげで頭真っ白になって 眠れなかったんだからさ。」 じろっと敢えて睨みつけると 拓真も意味がわかったのか くすっと笑った。

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