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鳩時計⑪
「沢木室長から聞いた。
縁談を断る為に恋人のフリを
頼まれていたんだってな。」
拓真はそう言って煙草に火をつける。
そっか。
沢木さん話したんだ。
俺と拓真が知り合いだって沢木さんは
知ってたんだな。やっぱり・・。
きっと拓真の様子を見て何かあったと思って
そうしてくれたのかもしれない。
あの人ならそういう事すぐに察するだろうし。
でも。
今の俺はそれだけじゃない。
ビジネスって言いながら
ビジネスじゃないって気づいてしまった。
今までそうじゃなかったけど。
拓真にいつから男もイケるようになったって
言われて。すごい違和感で。
別に男がイケるようになったんじゃない。
伊織さんだからそうなったんだって
結局認めざる負えない自分に気づいてしまった。
ちゃんと話さないと。
相当な勇気をもって俺に告白してくれた。
今までもきっと辛かったんだろうし。
それでも応えられないけど。
友達としてちゃんと向き合わなきゃ
拓真に失礼だって思ってて・・。
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