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鳩時計⑬
「・・・好きなのか。洲崎社長を。」
拓真は煙草を灰皿に押しつけるとそう聞いた。
好き。
君の好きには色々種類があるのか。
伊織さんは呆れたようにそう言って。
ホントはそんなのない。
自分を認めたくなくてそう言っただけで。
そう。俺は・・・。
「うん。男がイケるようになった訳じゃないけど。
俺は伊織さんが好きなんだと思う・・。」
言葉にすると心が落ち着く。
今まではただざわざわと蠢くだけで。
でも。そっか。
今。ちゃんと認めたんだ。
俺は伊織さんが好きだって。
男とか女とか。
そういう事じゃなくて俺はあの人が
好きなんだって・・・。
シンとその場が静まり返る。
慌てて口を開いた。
「拓真の気持ちは嬉しい。
それに申し訳なかったなって思う。
ずっと辛かったんだろ。それでも友達関係を
崩さないようにってしてくれたのは
すごく助かったし。拓真が嫌いとかじゃないんだ。
友達としては一番大事だし。でも。今俺は・・・。」
「わかった。」
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