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鳩時計⑲
ああ。と伊織さんは頷いた。
「君と飯を食う場合 必ず料理が並ぶだろう。
その時その時で食べたい物に箸を伸ばす。
先に口内に入れた後味が残る中で次に何を食べるか。
何を飲むか。考えるのは楽しい。
君もそうだろうと思い 料理長にそうしてくれと
頼んでおいた。」
えー。
「嫌がられたんじゃないですか。
温かい物は温かいタイミングでとかあるから・・。」
こういう高級旅館は大体割烹スタイル。
料理長さんとかもきっとその道の
凄い人だったりするのに。
伊織さんはツンと澄ました顔をして
「温かい物は後からそのタイミングで
出てくるから大丈夫だ。」
バカにするなとでも言うようにニヤッと笑う。
なんか可愛い。
この人 時々ちょっと子供っぽいんだよな。
「へえ。学んだんですね。」
敢えてわざとらしく驚いたように返すと
「言っただろう。勉強中だ。」
とまた澄まし顔。
顔を見合わせくすくすと笑った。
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