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鳩時計㉓

「ビジネス上の話です。 恋人に見えるように仕上げをするなら 今しか無いのかなって・・思って・・。」 言いながら胸がずきずき痛む。 そうじゃないって心の中が叫んでる。 でも。 「伊織さんも言ってたじゃないですか。 好きとかどうとか関係ないって。 色々考えたんですけど。だったらやっぱり そういう事しておいた方がいいのかなって・・・。」 声がどんどん小さくなる。 みじめだな。俺・・。 自分からこんな事。 それも伊織さんに向かって。 あんだけ自分はそうじゃない。って 言い続けてきたのに 結局俺だって見返りを求めてる。 この気持ちに決着をつける為に 見返りを・・・。 はあ。と深いため息が聞こえた。 「全く君らしくない発言だな。 何故そういう事を言い出したのか 皆目見当がつかない。 ここまでの会話全てが嘘だったと 言っているようなものだ。」 蔑む様な声音でピシャッと 跳ね除けられる。 「・・・帰るぞ。」 伊織さんは立ち上がり そのまま個室を出て行った。

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