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鳩時計㉛
この人にはわからない。
俺がどういうつもりでこんな事をしたのか。
ビジネスだからちゃんとやろうなんて建前で。
幸せになって貰いたかった。
好きでもない人と結婚させられる
全部人の思惑通りなんて。
跡を継ぐ為だけに存在する。とか。
伊織さんは絶対にそれだけの人じゃない。
上から目線で横暴で。
でもだからって差別もしないし 嘘もつかない。
いい物はいいって素直に認めて
嫌いな物ははっきりとそう言う。
知らない事を知る為の努力は惜しまないし
俺なんかの話でも一生懸命聞いてくれて・・。
でも。
確かにそんなの。
勝手に俺が思っていただけだ。
「・・すいません。」
ふん。と伊織さんは鼻を鳴らす。
「何故謝る。つまりまたあれか。
君は好意でそういう判断をし 何も話さず
今日 こうやってあの場に来た。
俺にはそれがどういう事かがわからない。
そういう話だな。」
好意。
そうですね。
そう言われちゃうと何だか笑えてくる。
まあ。いいや。
とにかく伊織さんは結婚せずに済んで
俺は店を失わずに済んだ。
後は前に戻るだけ・・。
「そうですね。好意です。」
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