114 / 121
鳩時計㉜
伊織さんはニヤッと笑った。
「そうか。わかった。」
満足げに頷いて。
沢木さんも 何故か堪えきれないかのように
クックッと笑い出す。
え。何だろう。。
その時 車が店の前に到着した。
「行くぞ。」
伊織さんは 笹目さんがドアを開けるのも待たず
俺の手を引いて 車を降り 店のドアを開けた。
あれ。何で鍵・・。
背中を押されて中に入ると じいちゃんが
椅子に座り おう。と手を挙げた。
え。
「じ・・じいちゃん。どうしたの。」
ふと見ると依田時計店と書かれたジャンパーを着た
男性が脚立に乗り 壁に鳩時計を設置している。
「鳩時計を直すから立ち会ってくれって
そこの人に言われてな。」
沢木さんを指差した。
え。
振り返ると沢木さんはニッコリと笑みを浮かべ
「取り寄せていた部品の到着が遅れてね。
この場で直して貰う事にしたんだ。
良かったよ。何とか間に合って。」
作業をしていた人が脚立を降りると
書類にサインをし 金を払う。
時計屋さんは頭を下げ 店を出て行った。
直ったんだ。
・・良かった。。
じいちゃんに見せてあげられる。
伊織さんを見上げると 優しい瞳で頷かれた。
何だかじわっと気持ちが温かくなる。
その時じいちゃんが首を傾げ 立ち上がり
ゆっくりと伊織さんに近づいた。
ともだちにシェアしよう!