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鳩時計㉝
「君は確か・・。」
じいちゃんがそう言うと伊織さんは頭を下げる。
おお。やっぱりとじいちゃんは笑顔になった。
「随分大きくなったなぁ。まあ。あれからの
年月を考えれば当たり前か。」
へ?
「じ・・じいちゃん。伊織さん。知ってるの?」
「なんだ。柚は覚えておらんのか。
まあ。お前はかなり小さかったからな。
ほら。鳩時計の前でそうやって二人並んで
鳩が鳴くのを楽しみに待っていただろう。」
二人並んで・・。
横に立つ伊織さんを見上げ 鳩時計へと視線を移す。
ザッと記憶が蘇った。
綺麗な女性に連れられて 伊織さんがいつも座る
ボックス席でオムライスを食べていたお兄ちゃん。
俺が鳩時計が鳴くのをいつものように
待っていたら 席を立って近づいてきて。
「一体 そこで何をしている。」
「鳩時計が鳴くのを待ってんだよ。」
鳩時計?って首を傾げられて。
「可愛いんだって。ああ。もうすぐだから
ここで一緒に見ようぜ!」
お兄ちゃんの腕を掴み 鳩時計を指差した。
ポーンって音がして扉が開き 鳩が出てきて
ホウホウと鳴く。
「な!ほら。可愛いだろっ。」
そう言うとお兄ちゃんはじっと鳩時計を見つめ
コクンと頷き 俺に視線を戻して微笑んだ・・。
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