120 / 121
エピローグ④
「きっかけなどどうでもいい。
100万で君が手に入るなら安いものだし
まあ。君はそんな奴じゃなかったが。」
ニコニコと微笑んだ。
ええ。。
「じゃあ最初態度が悪かったのは・・。」
「君が何もかもすっかり忘れていたから腹が立った。
あのテーラーの住田さんは 昔 この近所に住んでいて
店の常連だったから敢えて連れて行ったのに
それさえも君は気づかなかったからな。」
ああ・・そうですか。。
はあ。。
もう。ため息しか出ない。
「じゃあ。伊織さんは子供の頃 うちの店に
来ていた時から俺が好きだったって言うんですか。」
そんな事あるのかな。
ましてや男同士で・・。
伊織さんは何を言っている。とでも言わんばかりに
顔をしかめた。
「君が先に言ったんだ。お兄ちゃん大好きと。」
あんぐりと口が開く。
思わず吹き出すと伊織さんもクックッと笑い出した。
それこそ意味が違う。
でも。もしかしたらその頃の伊織さんは
愛情に飢えていたのかな。
だから辛い境遇の中 大人になり うちの店に来て。
あの席に座り 川を眺めて。
お母さんに会えて。
俺に好きだと言われたあの頃に
戻っていたのかもしれない。
きっかり。
一時間だけ・・。
ともだちにシェアしよう!