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エピローグ④

「きっかけなどどうでもいい。 100万で君が手に入るなら安いものだし まあ。君はそんな奴じゃなかったが。」 ニコニコと微笑んだ。 ええ。。 「じゃあ最初態度が悪かったのは・・。」 「君が何もかもすっかり忘れていたから腹が立った。 あのテーラーの住田さんは 昔 この近所に住んでいて 店の常連だったから敢えて連れて行ったのに それさえも君は気づかなかったからな。」 ああ・・そうですか。。 はあ。。 もう。ため息しか出ない。 「じゃあ。伊織さんは子供の頃 うちの店に 来ていた時から俺が好きだったって言うんですか。」 そんな事あるのかな。 ましてや男同士で・・。 伊織さんは何を言っている。とでも言わんばかりに 顔をしかめた。 「君が先に言ったんだ。お兄ちゃん大好きと。」 あんぐりと口が開く。 思わず吹き出すと伊織さんもクックッと笑い出した。 それこそ意味が違う。 でも。もしかしたらその頃の伊織さんは 愛情に飢えていたのかな。 だから辛い境遇の中 大人になり うちの店に来て。 あの席に座り 川を眺めて。 お母さんに会えて。 俺に好きだと言われたあの頃に 戻っていたのかもしれない。 きっかり。 一時間だけ・・。

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