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第2話

 光くんは今日から入店なので早速お客さんから指名がついた。ガクガクブルブルしているように見える。こういう仕事は初めてだというから緊張しているんだろう。この店は身分証を提示しないとデリヘルを頼めない決まりになっている。だから変なお客さんは少ないのだが、以前ここを辞めた子は無理やりSMを強要されたんだと聞いた。SMはオプションだからよっぽどタフなデリヘル嬢じゃないとやらない。辞めた男の子は大人しい子でSMなんかするタイプではなかった。  光くんが呼ばれるとしんと待機室は静まり返った。テレビではドラマの再放送をやっている。今日は日曜日なので大学は休みだ。ドラマの再放送は平日が多いが、今日は特別なんだろう。暫くみんなでドラマを観ていると、智哉くんが「野々くんは変な客にあたったことある?」と訊いてきた。野々なんて珍しい源氏名だが本名は野風なので近いといえば近い。のかぜ、それも珍しい名前だが。俺は苦笑する。そして「ないよ」と言った。俺を犯した連中に比べれば真面な客ばかりだ。 「俺さあ、この前ホームレスみたいなおっさんに当たったよ」  智哉くんは天上を見ながら呟く。 「え」 「風呂に入りたくて、呼んだんだとさ。一人じゃ怖くて風呂に入れないんだって言ってた。だからずーっと風呂で身体を洗ってあげたんだ。一時間くらい風呂に入ったら手が皺皺にふやけたよ。ほんと参ったな。頭なんか白いふけだらけで3回以上は洗ったぞ」  それはラッキーだったというかアンラッキーだというか。なんて答えてあげればいいんだろう。120分の指名を受けて半分以上は風呂に入っていたんなら楽だったかもしれない。智哉くんはそれ以上何も言わなかった。

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