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第4話

 サッシの上には少しづつ雪が積もり始めていた。ここは2階で1階が事務所だから道路にどれくらい雪が積もったか分からないが、外が異様に静かだ。車の音もしない。テレビではドラマの再放送が終わって、ドキュメンタリーが始まった。歌舞伎町を生きる少女たち、俺に近い人生の持ち主たちかもしれない。  智哉くんの持っているスマホから着信音が流れた。1階から呼びにくればいいのだが、この店は2階に来ることをしないで電話で指名を告げる。智哉くんは案の定、お客さんに呼ばれたみたいでホクホクしながらポーチを持った。ポーチの中にはイソジンだとかアルコールスプレーだとかグリンスを入れておく決まりになっている。グリンスは性病だと、あそこが痛くなるといって必需品だ。 「野々もさ、この前いいって言ってたお客に呼ばれるといいな」  智哉くんはさらりと言う。この前、眼鏡を掛けたインテリ風の男の人に呼ばれた。イケメンという訳ではないが清潔そうで女みたいな顔をしていた。だから、智哉くんにいい人に当たったと自慢してしまった。その人とは一緒にお風呂に入ってチョンというような軽いキスをした。それから口は使わずに手で抜いてあげた。男の人は「こんなの初めてだ。また呼んでもいいかな」と言って一万円札を握らせてくれた。俺は「このお金でまた会いませんか?」などと歯の浮くようなセリフを言ってお金を返した。なんだか男の人に惚れる意味がその時分かった。

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