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第5話
それから暫くして俺のスマホにも着信があった。事務所で働く事務員さんからで今日は雪だから早く帰ったほうがいいよ、と言う。やった!こういう日は気分が乗らない。ホテルで外のことばかり考えながら仕事するのは嫌だ。帰りに駅ビルで刺身でも買ってビールのつまみにしよう。21歳だが結構飲める胃袋なんだ。お父さんが依存症らしかったから血を受け継いでいるのかな。毎日飲むのだけは避けようと思った。お父さんは肝臓癌で天国に居る。
待機室を出て階段を下りる。ここから駅までは歩きだ。夜はこの辺りは飲み屋街になるのだが昼間はあまり人はいない。雪のせいだからか車の通りもない。白いアスファルトに俺の足跡が付く。
駅に行くと電光掲示板に電車が遅れていると表示された。雪だからだろうか。どれくらい遅れているのか近づいて確認すると20分と出ていた。それくらいならホームで待てる。俺は空いている椅子を見つけて腰かけた。
隣に人の座るのが分かって横を見る。あの眼鏡のインテリ風が膝の上にビジネスバッグを乗っけている。こうしてホテルじゃない外で会うともしかしたらイケメンなのかもしれないと思った。それにしても偶然だ。俺は声をあげそうになったが今は仕事の時間外だ。それにデリヘル嬢に話し掛けられたら、この人も困るだろう。俺は反対の方角を向いて身バレしないようにした。ルールは守らなくてはいけない。
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