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第6話

 ホームに電車が滑りこんで来た。俺はショルダーバッグを肩に下げて電車に乗り込む。男の人も乗ってきて俺の前に腰かけた。俺は場所を変えようか躊躇したが何も逃げる必要もないと思いスマホを操作した。最近、電子書籍にハマっている。  デリヘルの待機室があった駅から俺の住む家までは2駅だ。駅に着いてからは20分ほど歩かなくてはいけない。自転車でも良かったんだが、俺は犯されたのが自転車置き場の近くだったので自然とその場所から離れるようになってしまっている。あの時のことを思い出すと嘔吐しそうだ。相手は一人じゃなかった。一人だったら高校のときラグビー部だった俺は負けなかっただろう。三人もの人間に代わる代わる犯された。  透明なビニール傘にはすぐに雪が積もって白い色に変わる。ショルダーバッグの中から着信音が聴こえた。チャックを開けて中をまさぐってスマホを取り出す。お母さんから電話だった。雪だから心配したんだ、と声を震わせていた。俺はハハハと笑って、これくらいの雪で心配することないよと言った。 「何か買って帰ろうか?」 「あ、じゃ、ソースを買って来てくれない?コンビニのでいいの。とんかつにしようと思っていたんだけどソースが切れそうなの」 「ああ、帰り道にあるコンビニに寄るよ。でも俺、刺身も買ってきたんだけど……」  俺は言い淀む。 「そう、それじゃあ、ビールのつまにに刺身を食べたら?」 「そうだな」  お母さんは今日は俺がレンタルショップでアルバイトをして来たんだと思っている。レンタルショップと駅は同じ方向だから帰り道のコンビニに寄ってもバレない。ついでにアイスでも買って帰ろう。

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