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第7話
家に帰り玄関を開けてスニーカーを脱ぐと自室に行き、デリヘルのホームページを見る。俺の行っているデリヘルは日記を書かなくてはいけないことになっている。今日、起こった何でもないこと、雪が降ったとか電車が遅れたとか、お客さんはこんなの見て何を欲情するのか知らないが日記をまめに書いている子は人気がある。俺は帰りがけに撮った、雪が積もった傘をさしている写真をぼかし付きでアップした。
居間に行きビールのプルタブを開けてグラスに注ぐ。黄金色の液体に白い泡。俺は泡に口をつけると唇がくすぐったくなった。そのまま喉を鳴らして飲んでから鮪の刺身を食べる。お母さんが醤油とわさびを用意してくれたのだ。お母さんは私も一口飲もうかな、と言って冷蔵庫から糖質ゼロのビールの缶を取り出した。
「別にいいんじゃない。後は食べて寝るだけだし」
「そうだよね。よーし、雪見酒だ」
お母さんは小さい子供みたいにはしゃぐ。
ビールを飲み終え、とんかつをお母さんと二人、キッチンのテーブルについて食べる。キャベツの千切りはきちんと切って皿に乗せたもので、普通のとんかつやのキャベツに比べればちょっと幅が広い。でもお母さんの愛情がこもっている感じがして有難い。
「野風は明日、学校でしょ。雪がやんでくれればいいのにね」
「うん、でも積もってたとしても行くようにするよ。それに学校が終わったらバイトがあるし、どっちにしても出掛けるんだ」
俺はそう言うととんかつを咀嚼した。柔らかくてジューシーでとても美味しかった。牛肉も好きだけど豚肉もいいな。そうだ、今度お母さんを食べ放題のしゃぶしゃぶ屋さんに連れていってあげようか。確か1200円くらいで好きなだけ食べられると看板に出ていた。大学生の胃袋に食べ放題は嬉しい。
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