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第8話
俺の家はコーポの2階だ。2DKの狭い間取り。1部屋を俺が占領してしまっているからお母さんはテレビのある居間に夜は布団を敷いて寝ている。21歳にもなって親と一緒には眠れない。俺が寝ている隣の家のテレビは何時も大音量で笑い声がこっちの部屋まで丸聞こえだ。でも安いコーポに住んでいるので文句はいえない。隣の部屋は老夫婦が住んでいる。
次の日はまだ雪が降っていた。だいぶ積もって雪だるまが作れるんじゃないかと思った。俺は小さな頃にかまくらを作って貰った覚えがある。その頃はお父さんは元気だったが、確か日本酒を飲みながら作っていた。依存症はすでに始まっていたんだろう。俺って不幸だと思ってしまうときがあるがお父さんも相当に不幸だ。まだ死ぬのは早かった。
電車に乗って1時間以上も掛けて学校へ行くと講義がよく被る可愛い女の子が声を掛けて来た。LINEのIDを教えて欲しいんだそうだ。俺はメモ帳をショルダーバッグから出して電話番号を教える。IDじゃなくて電話番号でLINEをやっている。
「有難う、あの、迷惑じゃない?」
「うん、でもバイトで忙しいからトーク出来ないことが多いと思うよ」
俺はそう答えると口の筋肉をあげた。笑っているように見えるだろうか。最近は学校で笑った覚えがない。待機室ではコロコロとよく笑うのに。
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