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第11話

 お風呂を出てから自室に行ってスマホを見ると今日の昼間に学校で電話番号を教えた女の子からLINEが来ていた。名前が遥香ちゃんというみたいだ。画面には「今日は突然ゴメンね、菊池くんは野風って名前なんだね。野風くんって呼んでもいい?」とメッセージが打ってある。 「ああ、いいよ、友達はみんな野風って呼ぶんだ」  俺はそう返信を返すと勉強を始める。大学はきちんと卒業したいし、そうしたら都内にでもマンションを借りてお母さんと暮らすのもいい。東京に住めばチンピラたちからも逃げられるだろう。  次の日に学校に行くと遥香ちゃんに会って自然と笑みを交わした。少しえくぼの出来る可愛い笑顔。でも俺は彼女を作る気もないし、好きな子さえ作りたいとは思わない。だってデリヘル嬢なんだから。何時も病気と隣合わせだ。そういえば俺がいいと思った人とは病気がうつるようなことはしなかった。眼鏡のインテリ風、この前ホームで会ったが何の仕事をしているんだろう。  学校が終わり待機室へ向かう。駅ビルの中にある靴屋さんで長靴を買った。濃紺のブランド品だ。おっさんが履くような長靴は流石にダサくて履けない。痛い出費だが大事に持っていよう。靴屋でスニーカーから長靴に履き替える。ここから待機室までは歩きだ。また転ばないように気を付けて行こう。雪で服が濡れたりしたら服までも買わなければいけなくなってしまう。

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