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第4話 相談のその先

・・・・・・・・・ 「あ、ごめん、着替えてる途中だっだよね。なんか、懐かしくてじゃれちゃった」 パッと榛から解放される。 ホッ 何なんだよ~、ったく。 ドッドッドッドッドッドッ 榛が離れてからも、心臓はうるさいくらいに体中を揺らし続けていた。 その日の部活帰り、榛から相談があると言われ俺は部室でひとり、後片付けをする榛を待っていた。 「おつかれっす!すいません、鍵お願いします!」 「ああ、気をつけて帰れよ」 1年が着替えを終えて帰り、部室は再び榛と俺、二人だけの空間になる。 さっきの事があるから、なんか、異常に緊張するな・・・ 「で、なんだよ?相談て」 「・・・うん、なんか、俺最近変なんだ」 深刻な顔で俯きながら、榛が話し出す。 「スランプってわけじゃなさそうだけど、何?バスケ、嫌になったとか?」 「・・・バスケは、楽しいよ。先輩達も期待してくれてるし、ゲームにも毎回使ってくれる」 「じゃあ、何だよ?」 「・・・俺・・・あきを見てると、なんか苦しくなって・・・」 椅子に座っていた榛が立ち上がり、壁に寄りかかって立っていた俺の方へと歩み寄る。 「!」 え?・・・これって、キス・・・? 「こーゆー事、したくなる」 「な、に言って・・・」 「あきは、嫌?俺にこーゆー事されるの」 え、え、ちょっと待って。嫌じゃない。嫌じゃないけど、やべえ、心臓痛え。 「さっき抱きしめた時、あき、俺にもわかるくらいドキドキしてたじゃん」 ・・・顔から火が出そうだ。あの心臓の音が榛に気付かれていたなんて。 「あき、真っ赤になって、かわいい」 「か、わいくなんて、ない!」 「あきはかわいいよ。ずっとバスケやってるわりに、細くてちっちゃい」 「それはっ、体質で・・・筋トレしてもなかなかつかねえしっ」 「腰だってこんな細いじゃん」 ブレザーの下から滑り込んできた榛の大きな手で、シャツの上から腰を掴まれる。 ゾクッとした感覚に、体の力が抜けそうになる。 「あき、なんかやらしい顔してる」 「え・・・」 ちゅ、と軽く口付けられ、俺は自分が榛を好きだという事に気付く。 だから榛の事目で追ったり、ドキドキしたり・・・ 自覚してしまうと ますます恥ずかしい。 「あき、下向かないで。俺の事見てよ」 「むり、だ」 ぐいっと両手で顔を引き上げられ、至近距離で榛の視線と絡み合わされる。 「キス、して欲しい?」 「っ!」 「ねえ、言ってよ、あき」 して、欲しい。けど恥ずかしくて言えそうにない。 俺は無言で目を閉じた。

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