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第6話 崩れゆく平凡
榛に「虐めてやる宣言」されてからも、校内の至る所でヤツを探している俺。
だけど、決して、トゥンクするために探しているのではない。ヤツの姿が見えたら、絶対に見つからないよう、もし見つかっても即座に逃げれるように、だ。
しかし部活ではそういうわけにも行かない。
とりあえず、今のところは避けに避けまくって危険を回避している状態。
幸い学年も違うし、二人きりになる状況が無いのが救いだ。
「今日は1年チームと2年チームでミニゲームやってもらうからなー。各学年のスタメンは前に出ろー」
キャプテンの合図で、それぞれのメンバーがコートに並ぶ。
俺の向かいに榛が並んでいて、一瞬目が合うが、俺は光速で目を逸らす。
あっぶねぇ!目が合ったら死んじゃうとこだったろうが!なんでこっち見んだよ、こえーよ!
ピーーーー!
ホイッスルと共にゲームが始まり、2年が得点をリードする試合運びになっていた。
バシッ
俺はゴール下でパスを受け、シュートしようと振り返ったその時、背後から榛がディフェンスしているのが目に入る。
くっそ、邪魔なんだよでけーのが!見てろよ、先輩の意地見せてやっから・・・
「あんなあからさまに避けられたら傷つくんだけど」
え?
間近に榛のさみしそうな顔があって、ぎょっとする。
その一瞬をつかれ、ボールを奪われてしまった。
「なにやってんだよ、あき!ボサっとすんな!」
チームメイトの怒号が飛ぶ。
その後の俺は榛の寂しそうな声と顔が頭から離れず、ゲームに集中できなかった。
ピーーーー!
「ハイ、おつかれー、2年チームの勝ちー。次、控えチーム整列ー!」
「あき、途中からどーしたんだよ、動き悪かったぞ?」
「ごめん、なんかぼーっとしちゃってさ。寝不足かな」
「お前、ちゃんと寝ろよ~!寝る子は育つんだぞ?だからお前の成長止まってんだよ」
チームメイトで同じクラスの松田が、そういって両手で俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてからかう。
松田にぐっちゃぐちゃにされた髪を直していると、ばちっと榛と目が合った。
なんで、こっち見てんだよ!
すぐに目を逸らしたが、まだ榛の視線を感じ、おそるおそる榛の方を向く。
え?なんでそんな悲しそうな顔すんだよ・・・
明らかにしょぼんとしている。榛は寂しそうに今度は自分から目を逸らし、膝の間に頭を項垂れて壁際に座った。
え、なんなの・・・?俺が悪いみてぇじゃん。
いや、そもそもガキの頃虐めてた俺が悪いのか?
傷ついた、って言ってたよな、あいつ。
俺、昔の事、ちゃんと謝ってないじゃん・・・
よし!
「榛」
「なんすか・・・」
項垂れる榛の頭上から声をかける。
「あのさ、今日、部活終わったらなんか食ってかねぇ?」
さっきまで寂しそうだった榛が、バッと顔を上げニッコニコになる。
「行きます!」
きゅん・・・
いやいやいやいや、きゅん・・・じゃねえよ!
おさまれ心臓!
榛も、もしかしたらやりすぎたって思ってるかもしれないしな。
よし、ラーメンでも食って仲直りしよう!
その時の俺は、知らなかった。
あのニッコニコの裏側に潜んでいるものがあったことを。
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