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第10話 見てはいけない 1
榛のセクハラストレッチに疲弊している今日この頃。
嫌なだけじゃなくて、ドキドキしてしまう自分が憎い・・・。
「あきー、掃除サボってんならゴミ捨て行ってきてよ」
「サボってねーし。考え事してただけだし!」
「サボってんじゃん、ゴミ捨て行け」
くっそ~めんどくせぇ・・・
クラスメイトにゴミ箱を押し付けられ、しぶしぶ校舎裏の焼却炉へ向かう。
・・・あ、榛・・・
校舎裏の非常階段の2階の踊り場に、榛と女子が一緒にいるのが見えた。
あのタイの色は3年女子・・・
何してんだ?あんな所で。
つい気になって見てしまう。
3年の女子は榛に抱きついて何か言っている。
ズキ
うん?なんだ今の。
榛が相手の顔を両手で包んでキスをする。
俺は思わず目を逸らして、慌てて焼却炉の方へ歩き出す。
ズキ
なんなんだ、このズキズキは!・・・もしかして、俺、ショック受けてんのか?
イヤイヤ、おかしい!いくら俺がゲイかもしれないとはいえ、あんなセクハラ男なんか絶対ごめんだし!
「セーンパイ」
「あ、榛・・・」
ゴミを捨てて教室に戻る途中で榛に声をかけられた。
やばい、さっきあんなもん見ちゃったから なんか気まずいな・・・
「今日練習休みっすね。残念」
「え?今日練習休み?」
「そっすよ。バレー部が練習試合で、バスケ部の体育館も使うからって、昨日キャプテン言ってたじゃないすか」
「そーだっけ?聞いてなかったわ」
「あきは俺とのエロエロストレッチでそれどころじゃないもんな?」
急に耳元に近付く榛にドキッとする。
「ち、近い!離れろよ!」
「やだ。あき、さっき見てただろ?」
「え!」
3年女子とのキス、見てたのバレてる・・・
「いや?何を?」
「へぇ~、しらばっくれるんだ」
グイッ
「ちょ、痛い。なんだよ、急に!」
腕を引っ張られて、さっき榛たちがいた踊り場まで連れていかれる。
「ほんとに見てない?」
「み、見てない」
榛がジリジリと迫ってきて、校舎の壁まで追い詰められてしまう。
「マジで見てねえの?俺がこうやって女とキスしてたの」
壁際に閉じ込められて榛の顔がどんどん近付いてくる。
嫌だ。さっき違う女とキスしてた場所でこんな・・・
「っこんな!強引な事してなかっただろ!」
「やっぱ見てたんじゃん」
・・・しまった・・・
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