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第11話 見てはいけない 2

「なに?あんな風に優しくキスして欲しいんだ?」 壁に寄りかかった俺の顔を下から覗き込み、歪んだ笑みを浮かべる榛。 「ちげーよ!てか離れろ!」 「やだ。なんで離れなきゃなんねぇの?」 「っこんなとこ、誰かに見られたらっ」 「見られたら?」 「変な噂とか、されたら困る」 「噂になったら俺たち、みんなから白い目でみられるかもね」 「だろ?お前だって困るだろ?」 「そしたら、あき、誰からも相手にされなくなって、完全に俺だけのものだ。はは、それいいな」 榛の笑顔がさらに歪んだものになる。 こいつ・・・マジでおかしい・・・ ガンッ 榛は 俺が持っていたゴミ箱を蹴り飛ばし、両手首を壁に押し付け、無理やり唇を奪いにくる。 「ん~!んんっ、っつ、はあ、あ」 きつく閉じた下唇を噛まれ、一瞬油断して榛の舌が入ってくるのを許してしまった。 「ううっ、はあ、はあっ」 「早く誰か見てくんねえかな、俺らがキスしてんの」 「い、やだ・・・それだけは・・・」 誰かに見られたらと思うと涙が出そうなくらい不安になって声が震える。 「・・・ああ、でも。あきのこんな顔、俺以外のやつが見たら許せねえな」 「なっ、んだよ、それっ」 「俺のオモチャなんだから、俺だけが見ていい顔なんだよ、あきの脅えてる顔は」 「・・・おまえ、マジ狂ってる・・・」 「あきが狂わせたんだろ。俺を」 「・・・え?」 「・・・もういい。なんか萎えた」 榛は すっ と俺から離れて階段を降りていく。 なんなんだよ・・・。俺が昔、虐めてたから?榛が狂ったのは、俺のせい? 「いてて・・・」 噛まれた下唇を触ると、うっすら血が滲んでいた。

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