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第21話 彼氏のお仕事 2
ふたりの体の間にある、榛の先端に恐る恐る触れると、ピクっと少しだけ反応する。
扱くだけでいいと頭ではわかっているのに、榛に触れただけで体が自分のものじゃないみたいに激しい動悸と息切れと発汗で言うことをきかない。
「・・・もういいや」
ドンッと榛に突き飛ばされて、ベッドから転げ落ちてしまった。
「トイレ行ってくる」
転がる俺を跨いで榛は部屋から出ていってしまった。
・・・いてぇ。
なんなんだよ、マジで。しろって言ったりもういいって言ったり。
立ち上がろうとして、自分の股間に違和感を覚え、目線を下げると
「え!?うううう嘘だ・・・」
勃ってる・・・。俺、ゲイかもしれないんじゃない。ゲイなんだ。男性器を触って勃つんだから。
たぶん、榛は俺がこんな状態になってるのに気付いて、突き飛ばしたんだろうな。
ただの嫌がらせでやってるだけなのに、俺がガチだったから・・・きっと、呆れてるよな。気持ち悪いって思ったかもしれない。嫌悪感を持ったに違いない。
なんだかいたたまれなくなって、トイレに籠る榛を置いてアパートを出て学校へ向かった。
「あき!」
自分の席に座ったと同時に、榛が俺のクラスへ入ってくる。
「なんで先に行くんだよ」
なんでって・・・
榛は走って来たのか、髪が乱れてネクタイも曲がって息が上がっている。自分のクラスへ行く前にここへ来たようで、カバンも持ったまま。
「榛、学校ではタメ口やめろよ」
「そんな理由で先に行ったのかよ」
・・・違うけど・・・
「一応、先輩なんだぞ、俺」
さっき勃っていたのを榛に気付かれていたかと思うと、目を合わせることができない。
「・・・樫村先輩、ちょっと来てください」
「嫌だ。もうHRの時間だろ。早く自分のクラス行けよ」
「俺に逆らうんですか?」
逆らう?・・・ああそうか、俺は榛のおもちゃだもんな。
「・・・わかった。行く」
榛の後に続いて、屋上出入口の踊り場まで来る。
「あき、座って」
階段に座った榛の横に座らされる。
「なんで黙って置いてくんだよ」
「・・・別に、ただ遅刻したくなかったから」
「ふーん・・・」
・・・気まずい。
「俺の事、好きになったからじゃないの?」
・・・は?
「あき、俺の触って勃ってたじゃん」
やっぱバレてた。
「俺の事マジで好きになっちゃった?」
「違う!」
「じゃあなんで勃ってたんだよ」
・・・それは、俺が、ゲイ、だからだ。
「言えよ。じゃないと・・・」
「ゲイなんだよ!」
・・・言ってしまった。
「え・・・?あきが?」
「女を好きになったことがない。興味無いんだ、女に」
「男が好きって事?」
「それもよくわかんないんだけど・・・でも今朝、榛の触って・・・自分でもわかんねーうちに・・・勃ってて」
「それで男が好きだって思ったわけ?」
「・・・うん」
・・・沈黙が重い。
「榛はからかってるだけなのに、俺がガチでゲイだって知ったら、気持ち悪いだろ。だから、もうほっといてくれよ」
「・・・ほっとけるわけねーだろ」
・・・え?
「あきのそんなネタ聞いて、俺がほっとくと思ってんの?」
「気持ち悪くねぇの?」
「気持ち悪い?全然」
榛・・・!ほんとはいいヤツなんだな・・・
「あきがゲイなら、俺と付き合ってることに何の問題も無いんじゃん。今まで以上にあきに手出していいってことだろ?」
「へ・・・?いや、それは違うんじゃ・・・」
「遠慮すんなよ。虐めるだけじゃなくて、ちゃーんと彼氏としての仕事もしてやるよ」
ちょっと待って。なんかおかしな方向になってるぞ。
「あき、楽しみにしてろよ!」
榛は、立ち上がって軽い足取りで階段を降りて行ってしまう。
え・・・。なんでこうなっちゃうんだ?
なんで気持ち悪がるどころか、ウキウキしちゃってんの?
ええ~~~~・・・
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