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第29話 どっち 1
「・・・き、あき」
ん・・・。なんだ?
「あき!」
瞼をゆっくり上げると目の前に榛の顔がある。
・・・・・・
・・・そっか。俺、昨日泣きながら寝ちゃったのか。
「あき、風呂入ってこいよ。顔汚ぇぞ」
汚ぇって・・・。榛が汚したんだろ。・・・出したのは俺だけど。
思い出したら腹が立ってくる。
起き上がってバスルームへ行く。
鏡に写った自分の姿に情けなくなった。
泣き腫らして赤くなった目元。頬にはカピカピになった自分の精子。両乳首も熱を持ったように痛い。
ふつふつと込み上げる怒りに任せて、猛スピードで全身を洗う。
「はあ。早く帰ろ・・・」
ガチャ
え!
「は、榛・・・」
「また風呂長くなると思って」
裸でバスルームに入ってくる榛。
はははは榛の裸とか!
なんだよ!均整のとれたいい体しやがって!
目のやり場に困る!・・・と思いつつも、大事な部分までしっかり見てしまった。
昨夜の事に腹が立っていたはずなのに、ドキドキが勝ってしまう俺。
確信した。やっぱり俺は男が好きなんだ。
「あき」
向き合った俺の体を抱き寄せて、榛は尻の割れ目に指を沿わせてくる。
ゾクッと背中に鳥肌が立った。
「入れていいって言ったよね?」
「・・・え!?」
言った?俺、そんなこと言った!?
「DVD観る前に俺、入れていい?って聞いたよな?」
・・・・・・ええ~!!
アレ、再生していいって意味じゃなかったのかよ!
「榛!待った!あれはそういう意味だと思わなくて・・・俺、入れられるのはちょっと・・・」
やだやだやだよ~(泣)絶対裂ける・・・。絶対無理!
「じゃあ、俺に入れてみる?」
「え!?」
榛に?
そりゃ、榛のキレイな顔が善がってるとことか見てみたいけど・・・榛、怖くねぇのかな?
「い、いいの?」
「いいよ。あきが入れたいなら」
マジか。榛・・・すげぇな。
「でも、勃ってないと入んないよ。俺が勃たせてやるよ。後ろ向いて」
体を反転させられて、後ろから前に回ってきた榛の手が俺の局部にかかる。
「ふっ、・・・う・・・」
昨日、先を無理矢理拡げられたせいで敏感になっていて、少しの刺激でもいつもより感じてしまう。
「んんっ・・・な、に?」
ぬるっとした感触が腰から尻の割れ目に沿って内腿を伝う。
なんかの液体・・・?
突然、後ろの穴に何かが入ってきて、ものすごい異物感に体が強ばる。
「あ、あ、なに?榛・・・」
手探りで確かめると、シリコンの様な湾曲したものが、穴に沿ってくっついている。
え・・・もしかして、これの一部が、俺のケツに入ってんの・・・?
そう考えると、急に膝がガクガクと震えだした。
「あ、は、榛、これ何なの?」
「ああ、プラグだよ。知らない?」
「ぷら・・・ぐ?」
「うん。これでケツの穴拡げんの」
そうなんだ、これで拡げるんだ・・・。ってちょっと待てよ。なんで俺のケツに入れてんだよ!
「あの・・・榛、えっと」
「なに?ちゃんとローション使ったし、いちばん小さいヤツ入れたから、痛くないだろ」
「そうじゃなくて・・・えと、俺、榛に・・・」
「あきの言うこと聞いてたら、虐めになんないじゃん。それに俺、掘られるなんて死んでも嫌だから」
俺だって嫌だよ!
「ひっ・・・あ、あぁ」
『ぷらぐ』とやらを榛が引き抜いたと思った瞬間、また押し戻されて、下半身の力が抜けそうになる。
繰り返し抜き差しされて、足だけでは体を支えられなくなって、俺はバスルームの壁にしがみつくように寄りかかった。
なにこれ・・・。こんなとこに異物を入れられて気持ち悪いのに、ゾワゾワとした知らない感覚が体を蝕んでいく。
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