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第33話 好き 2

「あき、部活まで会えなくてさみしいけど・・・浮気すんなよ」 俺の教室の前までついてきて、別れ際にぎゅっと抱きついてくる榛。 クラスメイト達に冷やかされながら席につくと、隣の席の名取がじっと見てくる。 「お、おはよ」 「おはよ」 名取には、榛を紹介してほしいと頼まれていたのに、すっかり忘れていて、しかもこんな状況になってしまって、ものすごい罪悪感がある。 「樫村さぁ、なんか今日、制服変じゃない?」 「あ・・・」 す、鋭い! 今朝、着ていたシャツを情事で汚してしまって、榛のシャツを借りたから、サイズが大きくて・・・ 「高杉くんと、ガチで付き合ってるんだ?エッチとかしちゃってるんだ?」 「・・・いや・・・そんな事は・・・」 無い!と断言できない自分。 「いいよね。高杉くんみたいなイケメンと付き合えてさ。美人しか相手にしないって聞いてたけど、なんで樫村みたいな凡人でしかも男がいいんだろ。謎」 俺だって謎だよ。 1000歩譲って榛がゲイだとしても、俺より顔がいい男なんて腐るほどいるのに。 なのにあいつは俺に『かわいい』なんて・・・ 思い出したら、恥ずかしくなるわ!恥ずかしいのと同時になんか恐怖だわ! 昼休み 母が寝坊して弁当ナシだった俺は、久しぶりに松田と一緒に学食へ来ていた。 「あき!」 あ、榛。 一緒にいるのは1年の女子3人。 「あきが学食なんてめずらしいね」 「うん。かーちゃんが寝坊して・・・」 「そうなんだ。・・・ごめん、俺、彼氏と一緒に食べるから。また今度ね」 一緒にいた女子達にそう言って、俺の横に榛が座る。 『彼氏』・・・。 残念そうに離れたテーブルに座る彼女たち。 「いいのかよ、いつも一緒に食ってんじゃねーの?」 「いーのいーの。別にいつも一緒じゃねーし。今日はあの子達だったってだけ。毎日代わる代わる声かけられてっし」 「あ、そう」 榛、モテてやがる。あんなに堂々と男に告白したヤツがモテてやがる。・・・謎だ。 「おまえらさ、ほんとに付き合ってんの?」 向かいに座っている松田が榛に聞く。 「あきから聞いてるけど、男どうしの付き合うって、登下校一緒にするだけなワケ?」 「は・・・?」 榛が俺を軽く睨む。 やっべ。松田には、なんにもしてないって言ってたんだった。つーか、ちちくり合ってるなんて言えるわけないじゃん。 「松田先輩は彼女と一緒にいて、登下校だけで満足できますか?」 「いや無理だろ。キスしてーし、スケベなこともしてーし。健全な高校男児が登下校だけで喜べるはずないじゃん」 「ですよね、俺もです」 それ以上、話を掘り下げんな~! 「樫村先輩とキスしたいし、裸にしてあちこち撫でて舐めまわして、スケベな事いっぱいしたいです」 澄ました顔でなんて事を!やめろ・・・、榛とのセックス思い出して、変な気分になる・・・! 「おまえらの絡みとか見たくねぇけど、好きならそれが普通だよな。あき、ヤラセてやれよ。かわいそうだぞ、高杉」 「え!?・・・まあ、考えとく・・・」 ヤってんだよ!言われなくても、もう!今朝もヤリたてホヤホヤだったんだよ! 「樫村先輩、顔真っ赤ですよ。かわいい。好きです。先輩は?」 榛の一言で、ザワザワしていたはずの食堂が急に静まりかえる。 周りじゅうが俺の答えを待ってる・・・。 「・・・・・・・・・・・・お、れは・・・」 言えるわけない。榛みたいにイケメンでもなければ、何か自慢出来るところがあるわけでもない。榛と俺じゃ釣り合わない。 こんな、堂々と人前で好きだ、なんて言えるわけないだろ。 「っ、俺、次の数学の課題やんの忘れてた!ごめん、先行くわ!」 トレイを返却口に返して、逃げるように食堂を出た。

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